無人島に行くなら誰と行く?という問いに、恋人は私の名を答えた。つまらない答えだと素直に思った。当然会話は盛り上がらず、乾いた笑いが自分の喉から零れ彼が投げたティッシュがぼとりと燃えるゴミの底に落ちた。
浮気をしている人間を毛嫌いする彼が知らない女と無人島に辿り着いたらどうなるのか、寒さや飢えを凌ぐ2人に仲間意識以上のものは芽生えないのか、2人以外誰も見ていない空間で肌を重ねようとはしないのか、そういうことばかり考えてしまう自分に嫌気がさす。
男性の、性の部分を信じることが出来ない私は環境さえ整っていればきっとみんな弱いんだろうと失礼なことを思っている。昔の恋人にも「私より可愛くて胸が大きくて優しい子がいたら好きになってしまうでしょ」「誰も見ていなくて絶対バレないなら浮気しちゃうでしょ」と嘆いていた私は、いつまでも不安定な少女のままだ。
恋人は今日も背中を向けて寝る。浮気はしない。けれど背中を向けて寝るのだ。ゴミ箱から漂う温い匂いから顔を背け、不定期に光る私の携帯を握りしめてベランダへ向かった。
私は無人島で彼と知らない女の子を見守る波にでもなりたい。私がこの場にいないと思っている彼が、女の子に見せる顔を見たい。そういえば人魚姫は声を失ったんだっけ、と思いながら掠れた声で彼の名前を呼んだ。
返事はなかった。
10/24/2025, 12:20:22 PM