#112 太陽の下で
もう秋らしい日なんて味わえないだろう。
コロナから始まってインフル、風邪、そしてインフルと家族間で発症と看病のマラソンリレーをしながら勝手に見切りをつけていたが。
やがて全員が復帰し、明日は祝日。
病み上がりでもあり、仕事の疲れは溜まっていたが「お出かけしたい」という子供のリクエストには応えたい。
折しも、最高気温も高めで晴れの予報が出ていた。
やってきたのは、動物園。
妻が人混みを嫌がったのと、混んでいてもそれなりに見られるだろうという判断だ。
出発したときは冷えていたが、日が高くなるにつれ子供から上着が荷物として渡される。嵩張っていくもののサイズが小さいから軽い。
少し予想はしていたが、一番はしゃいでいたのは妻であった。曰く「みんなで出かけるのが久しぶりで楽しい」と。
子供にリクエストされるまでは家でゴロゴロしようと言っていたくせに。それも、こちらの体調を気遣っての発言だろうが。
目ぼしい動物を見終えた頃、
ふと空を見上げた妻が「秋?これって秋?」と尋ねてきた。つられて視線を移せば晴れ空はうろこに近い雲が広がり、周囲で紅葉も見られ、遠出して動物園に来ている。こんな行楽日和の季節は正しく秋である。
なので肯定して返せば、
「そっか、行楽日和。うん、秋だね」
妻は子供に危険がないか、ちらっと確認して、また空を見上げていた。
「ありがとう、連れてきてくれて」
しばらくして満足したのか、そんな風に言ってくる。
「いや。こっちこそ、ありがとう」
いつものように返した。
暖かな太陽の下、歩き通しで火照ったた体に、爽やかな風が気持ちいい。
11/25/2023, 2:00:37 PM