かたいなか

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前回投稿分では、星図のような美しい、青のジャムと乳白色のモッツァレラ、それから小さな金平糖で作られた、スイーツピザのおはなしでした。

稲荷神社の子狐が、せっかくお母さんお手製の星図をちゃむちゃむ、ちゃむちゃむ!
幸福に食べておったのに、
お題が「消えた星図」だったので——もとい、ワサビ幽霊のイタズラのせいで、星図ピザが消失!

でもコンコン子狐、たまたま星図ピザの元ネタたる戦隊アニメ、管理局戦隊アドミンジャーの星図ピザ登場回を観ておりましたので、
都合良く、「アドミンジャーが来てピザを食べた」と、確信したのでした。

で、何故ワサビ幽霊が子狐の稲荷神社に居たのか、
ここに迫っていくのが今回のおはなし。
実はワサビ幽霊の同僚、言葉を話す不思議なハムスターの「ムクドリ」が、
諸事情により、本物の魔女の怒りを買いまして。

というのも魔女が丁寧に作っていた魔法の飴細工の砂時計をカリカリ壊してしまったのです。

『あらムクドリ。そんなに砂時計が好きだったの』
魔女の声は穏やかでしたが、とっとこムクドリは知っていました——怒っています。
『ふーん、そう、意外ね』
とっても、とっても、怒っています。

ムクドリはムクドリというビジネスネームのくせにハムスター、げっ歯類なので、
固いもの、かじりやすいものを見ると、本能としてカジカジ、かじかじ、噛んでしまうのですが、
なんならムクドリはそのカジカジ本能がドチャクソに強いタイプのハムなのですが、
魔女はそんなこと、お構い無しです。

『丁度良いわ。あなたが壊したその魔法菓子、飴細工の砂時計は、とっても高価な依頼品なのよ。
あなたが2個目と3個目と予備用……他の依頼の砂時計まで壊してしまわないように、
あなたを、あなたが大好きな砂時計の中に、閉じ込めてしまいましょう。 ね。ムクドリ』

ニッコリおっかない笑顔で魔女が、本気モード用の杖を取り出して、爆速で逃げるムクドリにエイ!
魔法を書けるとムクドリの、体がフワッと浮きまして、かわいい砂時計の中に収容完了。
カキン!カンカンカン、ころころ。
床に落ちて転がる砂時計の音が、無情です。
砂時計の音が、ドチャクソに、無情なのです。

『そこでちょっと反省なさい』
1ヶ月かけて作った魔法の砂時計を壊された魔女は、そう言って、飴細工の梱包作業に戻りました。

『出せやい!出せやい、んぅぅぅぅ!』
コロコロコロ、からからから、
とっとこムクドリを閉じ込めた砂時計は、
容器を割ろうにもツルツルしてて歯が立たず、
だいたい1週間ほどムクドリを閉じ込め続けて、
そのまんま、魔女に意図的に、放っとかれました。

その魔女の怒りの証明を、狐のチカラで割ってもらおうと、依頼に来たのがワサビ幽霊。
依頼料はムクドリの給料から天引きの予定です。

稲荷神社を参拝して、ちょっと神社のお手伝いをして、経緯も説明してその対価として、
なにより魔女に「封印解いてあげてもよろしい?」と許可を一応取っておきましたので、
稲荷狐は、ワサビ幽霊が持ってきたムクドリ封入砂時計を、割ってやることにしたのでした。

で、砂時計を稲荷狐に預けて帰る途中、ちょうど子狐が前回投稿分で、星図ピザを食っておったと。

カラカラカラ、ころころころ。
稲荷狐に預けられたとっとこムクドリは、
その後数十分、稲荷子狐の遊び道具になりまして、
カラカラカラ、ころころころ。
転がる砂時計の音と、
床で高速回転する砂時計の音、
色々な家具にぶつかる砂時計の音とを、
断続的に発生させて、最終的に1時間ほど経過してから、ようやく砂時計の外に出られましたとさ。

10/18/2025, 9:54:19 AM