わをん

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『夜明け前』

大型バスに乗って舗装されている所まで行き、そこから山の頂上を徒歩で目指すルートに降り立つと、あたりはまだ闇の中。人の人との話し声と石と土の道を歩く音を聞いているときに思ったことは、眠れずにスマートフォンを見るでもなく見ていた時間のこと。
目は動画や画像を追っているのに何も頭に入ってこない。眠気が来るのを待っているのに眠たくなるどころか目が冴えてくる。いつから眠るのが下手くそになってしまったのかと記憶を遡っても何が原因かわからない。このままでは死んでしまうのではと思い始めたときに無理矢理にでも思考を変えたくていつかやりたいと思っていたことを考えたときに最初に出てきたのがご来光のことだった。
時計を見てみるとスマートフォンを眠れずに眺めていたときと同じ時刻がバックライトに映し出された。時間の過ごし方のあまりの違いに今、山頂近くから東の方角を見つめている状況が夢なのかもと思えてくる。
もうすぐ音もなく光が差し込んでくる。その光を見たときに、私の中の何かは変わってくれるだろうか。眠れずにスマートフォンを見ていた時間をもう繰り返さずに済むだろうか。膨らみ過ぎた期待を抱えながら、昇る光をいまかいまかと待ちわびていた。

9/14/2024, 3:41:08 AM