き。

Open App

俺は自分で言うのもなんだが、人一倍元気な方だし、冬より夏が好きだ。かと言って嫌いな訳ではなく、ただその、少しだけ怖いという気持ちがあるのだ。
これは1種の呪いだろう。
人にとっては特別で喜ばしい日、そう誕生日というものなのだが、俺にとってはそこまで嬉しいものではなくて
。勉強机の上に置かれた5000円は14回目のその日を境に無くなり、挙句二度と姿を見せなかった。
父は暴力や暴言は無かったものの、そう本当に何も無かったのだ。何もせずただ朽ちていくだけであったのだ。
気が付けば家から消えていた。あの机の5000円は父が消えてから現れた。
母はと言うと酷く疲れた顔を毎日見せていた気がする。
朝早くから夜遅くまで外にいたもので、俺はすれ違いもしなかった。最後に見たのは棺桶の中で、首元を花で覆い隠していたような記憶がある。曖昧なのは人の性であろうか、覚えてもいたくないのだろう。今の自分でもそうするはずだ。
酷く痛い風が吹き荒れ始める12月に俺は産まれた。
確かに幸福であったはずだ。その時の父母は俺の知る父母と違い笑顔に包まれていたはずだ。写真という記録が訴える。何がきっかけなのかと問われれば、頭を抱えてしまうが。
1つ確かにわかることは、俺が産まれてしまってから父母は変わり果ててしまったということだけで。ただその辛い感情が、ふと渦になり俺を冷やしてくる。
それでもこの日だけは、何故か憎めないのだ。全て変わってしまったきっかけの日だと言うのに。
俺はこの気持ちを抱えながら、きっとまた雪を待つ。
呪いだ。この生が終わるまで続く呪いなのだ。

12/15/2024, 12:11:58 PM