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「志村さん、付き合ってください!」
 放課後の校舎裏。
 頭を下げた男子のうなじの向こう側。そこに神代くんがいた。神代くんはゴミ袋を持って、目を見開いていた。
 ああ、神様。高校に入学して初めて、神代くんと目が合いました。吹き抜ける風は涼しくて、制服の半袖をパタパタと揺らしている。

 神代くんは陸上部のエース。図書室からグラウンドを見下ろすと、いつも風みたいに速く走る神代くんがいた。神代くんは、集会で表彰されて照れ笑いして、部活で友達と話すときは口を大きく開けていた。

 本当はもっと近くで、神代くんの長い睫毛や目尻の皺を見たい。話したい。笑いあいたい。
 けれど、何だか住む世界が違う気がして――私が神代くんと交差することはないと思う。
 ずっと遠くから見つめているだけ。そう思っていたのに、こんなところで交わるなんて。

 チャンスだ。
 神代くんに私のことを覚えてほしい。
 目の前の男子にどう対応したら、神代くんに好印象を与えるだろう。告白されるなんて、初めてだ。手を口に添えて、未知の交差点で私は迷う。

「ありがとう。付き合おう」
 私は鼻にかかった声を出して、穏やかに微笑んだ。
「えっ、まじで?」
 男子は顔を上げた。頬を真っ赤に染めて。
「うん。こんな勇気を出して告白してくれたんだもの。今、好きになったよ」
「やった。めっちゃ嬉しいんだけど」
 私は笑顔で目を細めて、視線をそっとゴミ捨て場に寄せた。神代くんはゴミ袋を片付けて、早足で去っていく。

 これでいい。
 優しい神代くんには、告白成功シーンが深く記憶に残るはず。私は神代くんの脳にインプットされた。
 頬が熱を持っているのがわかる。

10/12/2025, 2:24:13 AM