みんみんどり

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前々作に書いた地学部の二人です
これだけでも読めますが、両方読んだ方がより楽しめるかと思います
結末は想像にお任せします

───

「私、いいんですか?」
「君が、いいんだよ」

私を見据えているこの方は、私がひょんなことで入部した地学部の先輩。
私のことが好きらしい。
私は最初ちょっかいをかけてくることに対して(申し訳ないが)鬱陶しいと思っていたけど、日に日に増すアプローチにころっと落ちて今、ここにいる。

つまり、私は先輩のことが好きになってしまった。

でもこの事実は先輩は知らない。
この気持ちを伝えたら、なんて言うかな。泣いたらちょっと引くかもしれない。

現時点、先輩は私が先輩を方位磁針代わりにしていい───人生の指針と言えばいいか───と言われた。いきなりそんな重いことを言われても困るので、とりあえず質問した、という流れである。

「───ぞんざいに扱うかもしれないですけど」
「物を雑に扱うのは良くないよ?」
「ぞんざいに扱うのは先輩の方です」
「なおさらひどいよそれ」

───なんて返せばいいか。
私の気持ちを伝えるチャンスなんてもうこれから無いかもしれない。
事実、先輩は引退間近なのだ。先延ばししてもいいことはないだろう。

女は度胸!もう一思いに言ってしまおう!!

「っ、あの、」
「?なに急に。僕のこと好きになっちゃった?」
「は?なんでそんなムードのかけらもないこと言うんですか」
「え、ごめんね?あと先輩にそんな口答えは良くないんじゃないかな?」
「すみません」
「で、どうしたの?」

正直、言う気を無くしそうだ。
なんでこんな人を好きになってしまったんだ?私。

「はぁーーーーーー」
「え、ほんとにごめんね、何がしたいの君は?あとムードって何?そういう空気だった?」
「いえ、私のタイミングがトンチンカンでした」
「えと、大丈夫なんだけど…何か言いたいことでも…?」
「はぁーーーーーー!」
「え、だから何、怖いんだけど」

覚悟を決めなおした私は、先輩の顔を見つめる。
…恥ずかしくて軽く死にそう。
目を閉じれば何とか言える気がする。

夜空の下、瞳をとじて、今。



「私、先輩のこと───」



20250123    【瞳をとじて】

1/23/2025, 2:35:29 PM