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#街へ

―――

携帯にタオルにテッシュ
財布と、ちょっとの菓子
その他諸々を鞄に詰めて、家を出る

まだ夜の明けきらぬ空に、白い息が上がる
風に吹かれ、電車に揺られ。
着いてすぐは、見慣れた場所だった


あそこの店は潰れてしまったのか
向こうの店は知らないな
あんな所に店なんてあったかな


...しかし、記憶と照らし合わせると
なんだか初めての場所の様でもあった。
まぁ、ウン十年ぶりだから当然なのだが

「......ん、うめぇな」

でも、あの時食べた団子屋の味は変わってなくて、ちょっと嬉しかったり。

そうして食べ歩きそこそこ、道なりに歩いていると、漸く目的の場所に着いた

そこまで結構な人とすれ違って来たが、ここまで来ると人影も見えない。

「......やっと来たぞ、先生」

そこには、一つの石碑。
...昔馴染みの先生が眠る場所。

別れは唐突だとはよく言ったもので
今まで言い訳を並べてきたが、
結局は、寝顔を見るのが怖かっただけ。
一度だけ見てしまった、今にも起き上がりそうな顔を

...だが、今、漸く踏ん切りがついて

「ほら、あんたの好きだった団子だぞ」

傍に置いて、そう呟いた。

「.........なぁ...話してぇ事が沢山あるんだ」

俺も近くに、腰掛けた。
遅刻の件は...あれだ、万年遅刻してたんだから、今回も小言くらいで許して欲しい。
嗚呼、そう言えば...

そう言いながら、俺は口を開いた。
今回は立場が逆だなぁ...なんて思いながら

視界に映る石碑の文字が、少しだけ滲んでいた

1/28/2026, 11:51:58 AM