秘密の箱
それは玉手箱
昔話の世界がそのまちには存在していた
浦島太郎は竜宮城が恋しくて
玉手箱を開けちゃうんだ
そしたら中から煙が出て来て
あっという間におじいちゃんになっちゃった
そして立ち上った煙が紫色した雲になってあのお山にかかったんだとさ
乙姫様からもらった宝物は?
煙と一緒にあのお山に飛んでった?
いやいや玉手箱はカラクリ箱で
本当の宝の密書は箱に残っていたんだよ
それとも知らず太郎は竜宮城へ帰れない老いた身で募る彼の地への思いを来る日も来る日も
綴り書きためた
そして命を終える前に数え切れない文を空っぽの玉手箱に入れ固く結んで海辺に埋めた
それこそが乙姫様への竜宮への愛の証
奇しくも密書にあった宝を手にする方法だったのだ
そして意図せず太郎が呼び寄せた宝物が土地の人々に多くの幸せをもたらし続ける事になる
この玉手箱が埋められた場所は箱と呼ばれた
漁が盛んで災害もなく穏やかな村だった
ここでは不思議な事に100年に一人スピリチュアルな女の子が生まれ乙姫の生まれ変わりとして村を更に豊かに平和にしたという
もう話してもいいだろう
今私の面前にいる彼女こそがそのひとだ
慈悲深い優しい囁きと微笑みを持つ人
海の宮の力を受け継ぐもの
あなたはふるさとの宝だ
秘密の箱にはあなたの名が刻まれているはず
だから…
なんでわかるのかって
その理由を知りたいのね
あのね我が家は龍宮の遣いの末裔なの
私は姫の眷属の任務を負って生を受けている
この世ではあなたの幼馴染として付かず離れず見守っているのよ
だから…帰って一緒にふるさとへ
もう直ぐあなたの力が必要になる
10/24/2025, 1:13:22 PM