パァンッッ!
部屋に鳴り響く銃声
…のようなクラッカーの音。
「「「「「お誕生日おめでとう〜!!」」」」」
11月18日、アーレントが部屋に帰った瞬間の出来事である。
とある世界で魔獣討伐をして、トランメンバー用の邸宅の自室に入った。
ランプに火を灯した瞬間、銃声のような音が鳴り響きアーレントはすぐに戦闘態勢をとった。
そして聞いた言葉は、誕生日を祝う言葉。
“あぇ……?誕生日…?あ〜今日18日か、早いねぇ。”
人の時間が経つのは、と警戒を解く。
アーレントは不老不死者である。
人間や精霊、魔族などとも違う「なにか」である。
それゆえ長い時を生きすぎて感覚が麻痺しているのだ。
アーレントの周りにいる者達はそれをわかってるからこそ、
サプライズをして一年が過ぎたことを知らせる。
親しい者の気配には反応しないからサプライズも成功するのだ。
そんなサプライズにのんびりと驚く彼に次々とプレゼントを渡す。
手袋やマフラー、紅茶や珍しい茶葉まで色々ある。
“なんだか、温まる系のグッズが多いね?
僕は別に魔法で暑さも寒さも防げるのだけれど。”
「もうすぐ冬で寒くなりますし、防げることがわかっていて
も暖かな場所にいて欲しいという願いでもあるんです
よ。」
近くにいた黒髪の青年が言う。
秋の暮れ、雪が降る日も出てくる季節。
確かに気温がグッと下がり、人々は冬の装いになる。
願い
願い、かぁ。僕に対しての願い。想い。
それだけで僕は充分あたたかく感じるなぁ。
僕よりも君たち自身を大事にしてくれ、なんて言葉は飲み込んで“ありがとう。大切に使うよ。”と返す。
本格的に雪が降って、冬になったら…
この子達にそれぞれの好きな温かい飲み物を淹れてあげよう。もらった茶葉でもいいなぁ。ボトルに入れて、山を登って山頂で飲むととかも良いかもね。
冬は空気が透き通ってるから、きっと綺麗な景色だろう。
僕がこんなに他者を想える日が来るとは思わなかったなぁ。
ひとつ一つ、記憶が重なって雪みたいに感情が降り積もっていって。今ではこんなにも愛おしく思う存在たちがいる。
幸せは、こういうことなんだろうな。
守りたい。
これから先も続く僕の道の中で、きっと毎年彼らは僕の元に集う。
僕の存在することが嬉しいと伝えてくれる。
“ありがとう”
何度伝えたって足りない言葉。
今日は化け物が生まれてしまった日
化け物が名を持った日
家族に出会った日
心を知った日
僕の 誕生日
11/17/2024, 4:41:54 PM