しずく

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 知らぬ間に沈み込んでいるあの夏の日の記憶の中だ。
「────…南ーっ」
 突然、現実の世界に引き戻される。
 ざざーん、と海の波の音がやけに大きく響いた。果てしなく続く海にぱっとピントが合った。
「遅れてごめーん!」
 砂浜を駆ける音が脳内を揺さぶる。
 砂を散らしながらこちらに一直線に駆けてくる友人の夏露の姿に酷く安心した。
 肩にこもっていた力がゆっくりと抜けていく。
「遅い」
「ごめんってー。南、ずっと待っててくれたの?マジでごめ────…っ、わぶ…っ」
 ざざーん、と静かに響いた波の音がBGMのように聞こえた。
 数秒の間の後、聞こえるように呟く。
「だっさ」
 ずささーっと砂浜での滑り込みで俺の目の前に到着した夏露。つまりは俺のまえで盛大に転けた。
 こいつはほんと俺を飽きさせない。
「う、うう~…、めっちゃ恥ずい…、余裕で死にそうなくらい恥ずい…」
「いつまでそうしてるつもり」
「だ、だってぇー…」
 転けた体勢のまま動かないそいつに笑みが零れる。
「ほら、立て」
「……ん、」
 一瞬躊躇した右手を差し出す。
 空気が変わらずに夏露が俺の手を取ったことにどれだけほっとしているか、きっと夏露はしらない。
「…ふ、」
「っ、笑った…!いやっ、確かに南の笑みってレアだけどさっ、ここで笑うなよっ」
 揺れる水面が、熱い砂浜が、太陽の光できらきらと輝いてあた。
 
 
 このときはまだ友達になれてよかったと、そう思っていた。



─友達─ #105  
南、夏露

(また寝落ちて投稿できてなかったし…。昨日のやつのほうがよくかけてた気がしてしまう)

10/26/2024, 8:44:16 AM