気になる彼と会話をしていると、心がふわふわしてくる。他愛のない会話かもしれないけれど、私には大切な時間。
少し、長く話してしまったな……とは思っていたけれど、そろそろお互いにタイムリミットだった。
「あ、じゃあそろそろ俺行くね」
「うん」
「さ……」
私はその言葉を聞きたくなくて、咄嗟に彼の唇の前に人差し指を差し出す。
目を丸くしている彼。驚いて当然だと思う。
でも、さよならは言わないで欲しいの。
彼からその言葉を聞きたくなかった。
彼の口元から指を離し、戸惑う彼に向けて微笑んだ。
「また……ね」
私が小さく言うと、なぜ指を向けたのか分かってくれたみたい。そして、眩いほどの笑顔で、こくんと頷く。
「うん、またね!」
その表情に、とくんと胸が高鳴るのを抑えられない。
やっぱり……彼のことが好き……かも。
おわり
二〇一、さよならは言わないで
12/3/2024, 12:13:20 PM