イオリ

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友情

 2階の窓辺に座って外の世界を眺める我が家の猫。朝日が眩しそうだけど、網戸越しから流れてくる夏風が気持ち良さそう。

 チュンチュンと声がした。1羽の雀が窓際にやってきた。瓦の上をちょこちょこと歩き回る。

 始めはじっと見ていただけの愛猫だが、我慢できず網戸にカリッと爪を立てる。案の定、雀はパッと飛んでいってしまった。

 こらこら、友だちを驚かせたら駄目だぞ。冗談ぽくそう言い聞かせながら、両手で両頬の肉を摘んで軽く引っ張ると、

 にゃあ(わかったよ)。と鳴いた。

 
 翌朝。

 雀がまた来ていた。同じ雀かな。だとしたらよく来たな、なんて思いながら、定位置に鎮座している愛猫を見る。

 昨日と同じように観察しているようだったが、やはり昨日と同じように手を伸ばしだした。

 止めようかな、どうしようかなと考えているうちに、彼女の手は網戸に達していた。

 サッ。

 あれ、昨日はカリッと聞こえたけど。

 よく見ると、爪ではなく、肉球で網戸に触れていた。どおりで音が違うわけだ。

 サッ、サッと何度も肉球タッチをする猫。雀の方は驚いた様子も無く、瓦散策を続けている。

 数分のち、さすがに飽きたのか、雀は飛んていった。あっという間に姿は見えなくなった。

 見えなくなったけど、愛猫は目を細めながら外を眺め続けた。

 
 友だち、明日も来るといいな、あご下をなでなでしながら言うと、

 にゃあ(メシー。はやくしろー)。と鳴いた。
 

7/24/2024, 10:38:53 PM