NoName

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彼と わたしは 幼馴染。

ふたりは 同じ街で 育ちました。

彼は 街を出る時に

必ず 戻ってくると

わたしに 誓いました。



彼は 何度も わたしに

手紙を 送ってきました。

わたしは 一度も

封を 開けませんでした。

一度でも 読んだら、

泣いてしまいそうだったのです。


そして 彼の連絡は

いつしか 途絶えてしまいました。



わたしは、街から 少し離れた

アパートを 借りました。

今日から ひとり暮らしです。

わたしは 張り切って

チーズオムレツを つくりました。

ふんわり焼きあがったオムレツと

スーパーで買ったワインと

サラダで ひとりきりの夜を

ささやかに お祝いしたのです。

わたしは 幸せな気分で

ベッドに 入りました。


ひとり暮らしの始まりは、

よく 眠れたのです。


明け方 ポストに

コトン と 何かが

投げ込まれる までは。


震える手で

四つ折りにされた紙を開き、

わたしは 涙を流しました。



「戻ってきたよ。これからは、ずっと一緒だ」



恋か、愛か、それとも 狂気か。

6/5/2025, 9:43:01 AM