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特別な夜


今日は数十年に一度の特別な日だ。
空が明るくなり、電気をつけずに生活できる時間が訪れる。
この惑星には昔、朝と夜という区別があったと以前何かの資料に記録されていたのを思い出した。今は昔で言うところの「夜」が1日の全てを支配していて、その概念はもうとっくに消滅している。

僕の家族は祖父母も含めて明るい日を迎えるのは初めてだからか、今日起きてからはソワソワとどこか落ち着きがない。
街中もお祭り騒ぎでビルの大きなビジョンも朝の訪れを報道するニュース番組を流している。
僕も授業が頭に入らず、いつ空が明るくなるのかと窓の外ばかり盗み見ていた。

時刻は12時。結局、今日一日空が明るくなることはなく、もう就寝の時間がきてしまった。
予測が外れることもあるだろう。
また明日来るかもしれない。
そうがっかりしながら布団に潜ろうとした時だった。

空がわずかに明るくなっている。
カーテンの隙間から漏れ出す光が潜り込んだ布団を照らしているのをもう一度見て、急いでカーテンと窓を開け放つ。
徐々に照らされていく街が光輝いて見えた。
その眩しさに目を瞬かせ、大きく息を吸うと

「あさだよ!!!」

家中に響く声で家族を叩き起こした。
寝ぼけ眼のみんなはなんのことかわからなかったのかもしれないけれど、僕はこの光景を家族で見れたことがとても嬉しい。
一生に一度見れるかどうかの光景だ。

街に出ると寝てしまうのが勿体無いほどに非日常に包まれている。まるで別世界に来たかのようで、本当は寝る時間だったのに興奮してそのまま一睡もせずに次の日を迎えた。僕はこんなことが初めてで、今日一日中あくびが止まらなかったが、思い出に残る素晴らしいひとときだった。

こんな日が毎日続けばいいのになんて思ってしまうけれど、きっとたまにあるから特別なんだろう。
そう言い聞かせながら僕は次の 特別な夜 に期待を込めて眠りについた。

1/21/2024, 5:23:51 PM