何事も無限なんかじゃないってこと、すべては有限なんだってこと、時間は平等だってこと。子供でも知っている。嫌というほど。
「ずっとこのままでいようか。時間も全部止めちゃってさ」
だけど先輩はそんなのお構いなしで、いつもどおりの笑顔で魔法みたいな言葉を吐く。夕焼けを背にした先輩は震えるほどに美しい。たまたま人の形をしているだけの神様のようだ。
時間を止めるなんてどうやるんだろう。わからないけど、先輩なら本当にできてしまいそうだと思った。だから聞くと、「簡単だよ」と先輩は笑う。いたずらっ子の笑み。それを見て初めて、僕は万能な神様といたずら好きな子供が紙一重であると知る。
「学校中の時計を止めちゃえばいい」
「時計を止めたって時間は止まりませんよ」
「でも、今すぐ帰らなくちゃいけない理由はひとつ減る」
ああ、なんで先輩は気づいてしまうんだろう。普段は何も考えていないような顔をして、適当ばかり言うくせに。こういうときだけ間違えずに救いの手を差し伸べるから、僕はいつまでもこの人の向こうに神様を見る。
「ね、ずっとだよ。ずっとこのまま。いいでしょ」
何がいいのか、もはやわからなくて。それでも、先輩の言葉は耳に馴染んだ。ずっとこのまま。ずっとこのまま。
それでもいいかな。それでもいいよ。先輩の声が優しく答える。この無邪気で完璧な神様の誘いを、拒める人がこの世にいるのか。わからないまま目をつむる。隣に寄り添ってくれる熱が、ずっとこのまま、離れないことを祈っている。
1/12/2026, 2:59:51 PM