透明な水
(宝石の国二次創作)
器に水を汲み、水鏡を作る。それを持って、シンシャを探しに行った。私はシンシャの顔が好きだ。脆い石に刻まれた、繊細な顔を美しいと思う。シンシャは夜に閉じ込められているから、きっと自分の顔など見たことがない。だから、私の大好きなその顔を、見てもらいたいと思った。
「物好きでお節介な奴だなお前は」
会って用を話すと、シンシャは顔を顰めてそう言った。それでも、私の差し出した水鏡を、しばらく見つめていた。
「……俺の顔が美しくても、俺は透明な水も濁らせてしまう」
シンシャは映った自分の顔に触れようとして、やめた。そうして、何も言わずに去ってしまう。傷つけただろうか。物好きでお節介だとしても、全てを汚してしまうのだとしても。君は美しいと、そう伝えたいだけ。
5/22/2023, 7:39:57 AM