♯木漏れ日
ジイさんが公園のベンチに深々と腰かけていた。穏やかな木漏れ日の中、杖をついてうとうと微睡んでいる姿は平和そのものだ。在りし日の日本といった光景に俺は心を和ませる。
次に辺りをくまなく見回した。
子どもは学校へ。主婦は家事へ。
いまならだれの目もない。
足音を忍ばせてジイさんに近づこうとした――その瞬間だった。
ジイさんの皺に埋もれた目がゆっくりと開く。呑気にあくびをした後、カバンを手元に引き寄せた。
俺は口の中で軽く舌打ちをし、足早にその場を立ち去った。
5/8/2025, 3:04:38 AM