箱庭メリィ

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「あのっ、実はあなたのこと、好きです……!」

ベタといえば聞こえはいいが、定番中の定番、校舎裏に呼び出された翔子は、クラスの八尋に告白されていた。しかも、

「あのね、実はも何も、わたし、あなたがわたしのこと好きって知ってたわ」
「えぇっ!?」

とても緊張していただろうに、出鼻をくじかれた八尋は、真っ赤な顔になりながら真っ青になっていた。
翔子は、
(人ってこんな顔色出来るんだ)
と感心しながら、

「でもね、付き合うことは出来ないの。わたしはあなたのこと好きでもなんでもないから」

と断った。

「おっ、お友達からでも」
「既にクラスメイトじゃない」
「そうだけど、そうじゃなくてっ……」

八尋はしどろもどろしながらも食い下がったが、無情にも下校時刻を告げるチャイムが鳴った。
翔子は「じゃ、また明日」と手を振り、後方で待っていた友人たちと帰っていった。

「翔子さん……」

うなだれる八尋を夕焼けが照らす。
しばらく俯いていた八尋だったが、その内顔を上げ、校舎裏の影を振り向いた。

「どうだった!?」

振り向いた先の茂みから、三人の男子生徒が出てきた。一人はスマホを構えている。

「バッチリ!」

スマホを構えていた男子が、サムズアップをして答える。

「いや〜、名演技!」
「凄いな。あれ、ホントに自分のこと好きだと思ってるんだろ?」
「そりゃそうだろ。そうなるように演技してたんじゃん!」
「まんまと騙されてるな、あれ。ちょっと可哀想なくらい」
「振ってるんだからプラマイゼロだろ。むしろ「わたし好かれてるわ」ってプラスなんじゃねーの?」

わらわらと四人が集まって結果報告をしている。
八尋含むこの四人、実は三ヶ月も前から翔子を謀っていたのだ。
自分を好きだと誤解させるように行動をし、告白をした。上手くいけば付き合って騙し続ける予定だったのだが、振られたのは互いにとって幸か不幸か。
すべては役者を目指す八尋のためという大義名分を得た、立派なイタズラだ。

「しかし罰ゲームのせいで、もう告白させられるなんてビビったわー。ホントはもうちょっと好きにさせてから告るつもりだったのにさー」
「可哀想なことすんなよ」
「いや、でも付き合えたらアリっちゃアリだろ。結構可愛いじゃん?」
「何にしろ八尋、三ヶ月お疲れさん!」

四人は口々に今回の計画の成功を労いながら、鞄を持って校庭に向かっていった。みな笑顔だった。
四人がいた後ろに、一人の女子生徒がスマホを構えていることを、彼らは気づいていなかった。。


/7/14『隠された真実』

7/14/2025, 10:00:01 AM