作家志望の高校生

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遠い、とはなんだろうか。
物理的に距離が離れていることなら、現代の加速した移動手段によってその距離は縮まっただろう。
では、心理的な、隔たりだとか差別だとか、そういった類いのものだろうか。
それだけが遠いかと問われれば、どうにも納得できない気がする。
こんな不毛な問いを、もうかれこれ2時間は議論していた。
「だーかーらー!物理的な距離なんてどうでもいいんだってば!」
隣に座る、小柄で可愛い顔のくせに縄地区内一升瓶を抱いた男。
彼は、心理的な距離こそ遠さなのだと、酔う度に俺に力説してくる。
「……いや、結構遠いってのは物理的や距離のことだろ。他にどんな意味があったって、それは物理的な距離にその事象を例えているに過ぎないんだから。」
目の前で湯気を立てる焼き鳥を程々につまみつつ、彼の弁論に乗っかってやる。
彼はまだ心理がどうたら、差別がどうたらなどと語っているが、あの飲みっぷりと酔いっぷり、首の角度からするに十分後には電池切れだろう。
なんて思っていた矢先だった。
彼が突然、思い立ったように紙ナプキンで何かを折り始めた。
酔っ払いのブレブレの指先で作られる、不格好な紙飛行機。
紙ナプキンでは紙が薄すぎて、いまいち上手く自立しない。
一応形になったところで、彼が席を立った。
転んで騒ぎにされても面倒だ。
そんな打算的な考えを以て、俺は彼の横について行ってやることにした。
決して、久しぶりに見た紙飛行機に少し惹かれただとか、そんなことは無い。
彼は騒がしい居酒屋の暖簾を一度潜ると、へろへろの紙飛行機を、明後日の方向へ向けて飛ばした。
頼りなくて、フラフラしていて、けれど確かに遠い空へ飛んでいった紙飛行機を見て、今抱いているこのなんとも言えない感情が、微かに感じる風こそが、遠さなのだとぼんやり理解した。

テーマ:遠くの空へ

4/13/2026, 9:43:14 AM