『つまらないことでも続けていればどうにかなる』
そんなの幻想でしかなかった。
どれだけ努力しようと結果がでなければ何の意味もない。
頑張ったという過去しか残らない。それを誇らしいなんて思えるのはずっと先だ。
今はまだ無駄な時間を過ごしたとしか思えない。
何かつらいことでもあったのか、とはよく聞かれる。
実際は人間なら誰でも経験するような取るに足らないつらさなのに、僕は堪えられなかった。
今では他人の笑い声をきくだけでゾッとし、こちらを値踏みするようにみてコソコソと話す姿をみるだけで冷や汗がとまらない。そんな些細なことがトラウマになるなんて生きづらいことこの上ないのだ。
他人の要望にはできるだけ応えてきたし、頼まれればなんでもやった。犯罪まがいなことはなかっただけマシだけど、当然のように見下されて叩かれるのは心も肩も痛くてしかたなかった。
いつからか何をしてもつまらないと感じるようになった。
どうせいつか取り上げられてしまうなら頑張る理由も努力する意味もない。自分のためではなく他人のものにされるのになぜ僕がやらなければいけないのか。
そう思うようになってから、好きだったことも手につかなくなった。
書いていた文字を消し、描いていた絵を破いて、机の上にあるもの全てを押し入れにしまいこんだ。
編み途中のモチーフも刺し途中の刺繍も未完成のまましまった。かろうじて残ったお菓子作りの本は暇つぶしに眺めるだけで、店で買ってきたお菓子を食べながら放り投げる。
だってつまらないのだ。何をしても無駄でしかない。
でも、忘れるにはあまりにも眩しすぎて手放したくない。
そんな中途半端なまま、好きなことを嫌いだ苦手だと嘘をついて日々を過ごす。
僕はみんなが言う通りの嘘つきだ。
【題:つまらないことでも】
8/4/2023, 11:13:01 PM