『みかん』
食事を終えて、洗い物をして、私はダイニングテーブルでうとうとしていた。
お風呂からあがってきた彼が、眠っている私を見て、頭に何か丸いものを乗せる。
「……?」
私が起きると、コロンとみかんが転がった。
彼はベッドで寝ている。
私は彼に近づき、額の上にみかんを乗せた。
フフッと、目を開けずに彼が笑った。
みかんを持ち上げて見つめる。
「一緒に食べる?」
「うん!」
彼は起き上がって、私を膝の上に乗せた。
「はい、あーん。」
「え、あーん。」
剥いたみかんを一房口に入れる。
フフッと私も笑って、
「はい、あーん。」
彼の口元にもみかんを寄せると、パクッと食べてもぐもぐ。
「今度は口移しかな。」
「えー。」
「えーって。」
彼がみかんを一房口にくわえて、口唇を寄せる。
私はパクッとみかんだけ食べた。
彼は笑って、
「今度はお前を食べたいな。」
私に口唇を寄せる。
「私は食べ物じゃありません!」
言うと、彼は目を閉じたままフフッと笑った。
「お前は甘酸っぱいな……」
口唇を合わせる。
甘酸っぱい味がした。
12/29/2022, 4:23:39 PM