死にたい少年と、その相棒

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  /誰よりも、ずっと

「バカと天才は紙一重とは、手前の為の言葉だな」

ベッドに寝込んだアイツへ、そう吐き捨てた。
何時もは不健康な程に青白い顔が、今は茹でダコのようになっている。
「バカに、バカなんて言われたくないんだけど」
「この時期に川に入水して失敗した挙句風邪ひくバカが手前なんだから仕方ねぇな?」
笑えばアイツが睨んできたが、なんの凄みもない。

しばらく黙った後、アイツは俺から視線を外して掠れた声で話し出した。

「桜がね、綺麗だったんだ」
「桜?」
「そう。桜。河川敷の桜のほとんどが散って、川に浮いてた。それ見たら飛び込みたくなった」
「やっぱバカだろ手前」

一瞬口を噤んだあいつは、深く息を吐き出した。
「別に、今回は死のうとしたわけじゃない。本当に、ただ、気付いたら……」
「ンなこと、分かってる」

誰よりも分かっている。嘘だとは思わねぇ。
あの時、手前を助けた俺がいちばん分かる。
あの驚いたような顔は作り物なんかじゃねぇ。
何時も仮面じみた作った顔ばかり浮かべるアイツの、貴重な素の顔だった。
誰よりもずっと、傍で見てた俺だから分かるし、言い切れる。

4/9/2023, 11:32:06 AM