文月

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『言葉にならないもの 〜犬の気持ち』


また、朝がきた
忙しなく階段を駆け回る足音
ジャーと流れる水の音

そのあとに
アタイのご飯が待っている

キミがカバンを持つ音で
アタイはもうわかってしまう
これから、夜まで会えなくなること。。

靴を履く音
カバンの鈴が鳴る音
全部、聞きたくないのに耳が覚えている。

「行ってきます」
キミは笑って言うけど、
その声の奥に、ほんの少しだけ
アタイの気持ちをわかってくれている優しさがある。

しっぽは振るけど、足は動かない。

ドアが閉まると、世界が小さくなる
音が消えて、キミの匂いだけが部屋に残る
アタイはその匂いを胸いっぱいに吸い込んで、
目を閉じる。

だって、こうして待っている時間が、
アタイと君をまた強くつなげてくれるんだって、
ちゃんと知っているから。


…(夜)…


聞き覚えのあるエンジン音が遠くから聞こえる。
アタイの耳は、もう知っている。
ほかの誰とも違う、その足音。

ドアが開く前から、しっぽは勝手に動く。
騒がないでなんて、無理だよ。
だって、キミがやっと帰ってきたんだ。

「ただいま」
キミは笑って抱きしめてくれる
手の匂いをくんくん嗅ぐと
今日も美味しそうな匂いがする。

その向こうに、アタイの知らない世界があるんだろうな
でも、アタイはそれより、キミの匂いが好きだ。

何も言わなくても、わかってほしい
今日、キミが少し疲れていること
だから、アタイはただ隣で寝ころぶよ。

撫でくりまわされても
抱きしめられても
アタイの匂い嗅いで
「臭っ!」
って言われてもいいんだ。

だって、アタイにとっての一番の幸せは、
キミがここにいて
アタイが傍にいることなんだから。

8/13/2025, 3:00:51 PM