宵風に吹かれたい

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あの子が居なくなってからもう3週間が経つ。
学年1位でいつでも優しい、優等生なあの子。そんな子供を持った事で、少し有頂天になっていた私がいる事も分かっていた。でも、高校の卒業式の次の日、朝起きたらあの子が居ないことに気づいた。
焦って家中、町中を探し回った。どこにも居ないことに気づいて、放心状態であの子の部屋の床に雫を落とした。
ふとあの子の勉強机を見ると、山積みの参考書の横に一封の封筒があった。気になって中を見て、私は諦めた。

"レッテルを貼られるのに疲れました。今までありがとう。俺の好きな奴と一緒に旅に出ます。絶対に探さないでください。"

あの子の気持ちに気づけなかった。あの子をずっと傷つけてきた。自分のことしか考えていなかった。
自分が嫌になった。でも、あの子の最後の願いくらい叶えようと思って、あの子を探す事をやめた。

そんな私は今、あの子の写真を持って病室から窓を眺める。
まるで心だけ、逃避行をするように。

7/11/2025, 11:45:53 AM