気になって見に行くと、部屋はがらんとしていた。
「やっぱり」
自分と同じ間取りの、それほど広くない部屋。
元々物を置かない子だったけれど、からっぽのそこはずいぶん広く感じる。
正面にある掃き出し窓のすぐ下には1枚の紙が置かれていた。
拾い上げて目を通す。
《ごめんなさい。やっぱりあなたの隣りにはいられない。何もないわたしと、あるあなた。あなたとわたしは全然違う。》
「そんなこと、ないよ…」
白い紙にポタリと丸いシミができる。字が、にじむ。
「いっちゃん…」
急に後ろから声がかかり、とっさに涙を拭って振り向く。
「にぃくん。ごめん、やっぱりいなくなってた。わたし、いつも隣りにいたのに、全然、わかってあげられてなかっ」
「いっちゃんのせいじゃないよ」
そういって抱き締めてくれるあなたはいつもわたしの隣りにいてくれる。わたしたちの間に誰かが来たとしても、隣りはあなたなんだと信じていられる。
「大丈夫。必ず帰ってくるよ。君の隣りに僕がいるように。」
「うん…」
わたしの手から、ハラリと紙が落ちる。
わたしの隣りのあの子、0からの置き手紙が。
2/22/2023, 1:12:34 AM