『絵画の少年(かいがのしょうねん)』
僕は、田舎に居ました。
田舎の夏ごろ、丁度入道雲が背景に差し掛かっている快晴の日
その頃の僕は背がまだ小さく、滑舌もよくありませんでした。
ある日、一緒に遊んだ友達からこんな噂を聞きました。
「あの森には自分とよく似たなにかがいるらしい」
友達には「近づいちゃダメだぞ」と忠告を受けましたが、
好奇心旺盛な僕はその言葉には逆らえませんでした。
母に友達と遊びに行くと嘘をつき、森の中へ入っていきました。
すると、まさに楽園と言えるような美しい景色が広がっていました。
鳥たちの美しい歌声、様々な植物、黄金の泉、
まるで夢の中のようでした。
僕はずんずんと行進していき、あるところへたどり着きました。
そこは、さっきの楽園とはまた違う、でもどこか懐かしく感じる
古民家のようなところでした。
台所で沸かしていたであろうヤカンのお茶はまだ温かく感じました。
人が居ないにも関わらず、そのお茶はまだ温かい。
僕の他にも誰かいるのだろうか。
ふと、そう気になり「誰かいるのですか」そう聞きました。
すると、ガタリと後ろの部屋から物音のようなものが聞こえてきたのです。
僕は驚いて、少し肩を震わせながらも、えいっとその部屋の扉を押し開けました。
その部屋は、少しばかり大きなステンドガラスから僅かに明かりが射していました。
明かりが射す方向を見ると、一枚の絵画が置いてありました。
少し埃が被っていたので、はらってみました。
驚きました。そこに映っていたのは僕でした。
僕は、ちょっぴり困惑状態のまま、その絵にそっと触れました。
どうしましょう。その絵がこっちを見てきました。
それから表情を変え、首を動かし足を動かし、手を額縁にかけ、
絵から出てきてしまいました。
僕は恐怖から動けず、ただ冷や汗を掻くばかりでした。
そんな僕に絵は、
「君の体をちょうだい」
と、僕の耳元でねっとりと囁きました。
僕は怖くて恐くて堪らずその絵のことをひっぱたき、家をバタンッと飛び出しました。
それから走って走って走って走って、ようやく家にたどり着きました。
お母さんは汗だくの僕を見て困惑の色を顔に浮かべ、僕を必死に揺さぶりました。
その後のことは覚えていません。
母から聞くと、
「「体が欲しい。目が欲しい。手が欲しい。」」
といったことをずっと呟いていたそうな。
今思っても不思議です。結局あの絵はドッペルゲンガーかなにかだったのでしょうか。
それともパラレルワールドの僕?
どちらにせよ、身震いのする話しです。
そういえば僕、最近新しい絵画を買ったのです。
僕に似ていて、酷く疲労困憊した少年の絵でしたよ。
お題『遠い日の記憶』
私にしては珍しく少し長いお話しになりましたね。月曜の祝日、皆様はどうお過ごしになられたのでしょうか。私は「君たちはどう生きるか」を見に行きました。賛否両論かなりありますけれど、私的には面白かったです。というか酷評、低評価をされている方々には、失礼なことを言ってしまうのですが、幼稚な感想というか、主観的すぎる感想というか…いや、それぞれ感じ方はもちろん違うのですけれど、あまりにも視野が狭すぎるお方達だな…と。もちろん中にはこうこうこういう理由があって酷評している。と、納得できるお方もいるのですが…まぁ、是非皆様も映画館で見てみては如何でしょうか?万人受けはしない作品であるとは思いましたが、人によっては人生を変えてくれる作品かもしれません。
長々と私事をすみません。もし不快に思われたお方がいましたら、心からお詫び申し上げます。
では皆様、今日もよい夢を。
7/17/2023, 4:02:11 PM