花鈴

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「君は一体、僕のどこが好きなわけ?」
唐突に彼に聞かれた。
どこが?とか考えたことがなかったので「えーっとねぇ」からすぐに出ない。もちろん、好きは好きなのだけど、どこって言われたらどこかな?
「え、じゃあ、逆に聞くけど私のどこがすき?」と聞くと
「理由はない。好きだから好き」という返事。
「じゃあ、一緒だね、私も。好きだから好き」
すると、彼は「やっぱりそうだよな?そうなるよな?職場の子が彼女にどこが好きか聞かれて困ってるって言ってたから」
「ふぅん。全部、特に笑った顔!とか言ってあげたら安心するんじゃない?」
「君はそれで安心するの?」
「私は…しないかな。気持ち悪いかな」
「なんで気持ち悪い?」
「だって普段そんなこと言わないのに言われたら気持ち悪くない?」
「だね」
「あ~そういうこと言わないところとか好きかな」
「僕?」
「うん」
「普通女の子言われたいんじゃないの?」
「多分。だいたいが。でも、そういうとこ、ことごとく外しちゃう計算の無さというか、計算しても間違ってるのか、届くべき所に届けられていない所が逆に好きかも」
僕は何と返せばいいのかさっぱり分からない。
「つまり、完全な男の人なんてつまらないわけよ。でこぼこしてたりたまに変化球がくるのが人間らしくていいし、私もでこぼこだらけだから居心地いいんだよ」
「なるほどね、てことは不完全なの?僕って。完全でないとは思うけど」
愛すべき不完全な彼はそういってクッションを丸くしたりねじったりしてしばらく眺めていた。
そういう彼を見る時、私は幸せだと感じる。

#不完全な僕

8/31/2024, 10:59:39 AM