ヨヒラ

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「窓から見える景色」

病室の窓。それは私にとって退屈で残酷な現実に与えられた唯一の光だ。

爽やかな晴れでも、心を潤しそうな雨でも、どんな天気でも、病室と違って毎日目に見えるものが違うそれは、毎日違う絵を飾る額縁のようなものだった。それはいつでも私の心を新鮮な色で埋めつくしてくれた。

時折、私は外の景色をキャンパスに、夢を見る。
ある日はお菓子の世界、ある日は人間が滅んだあとの世界、といったように、少し現実を妄想で塗り替えてやるのだ。私にとって病院というのは、変えようのない現実の象徴だったので、少しばかりの意趣返しだ。ふふん。

――あぁ、なら、君に絵を描くための道具をあげるよ。その夢を僕にも見させて欲しいな。君の考えていることは僕達も知る必要があるからね。

ある日突然、医者は私にそう言って、キャンパスと油絵のセットをくれた。
その日以来、私は暇つぶしに絵を描くようになった。
日に日に病室は、私の絵の鮮やかな色で染って行った。あぁ……夢みたいだ……。

――お前さんがあの道具をあげてから、あの娘はとても元気そうだな……。

――あぁ、医者としても、患者が心から健やかにいるのは、とても助かる。……どうした?そんな物憂げな顔をして。

――だって、あの娘の話聞いたか?窓から見える景色にちょっとばかりの妄想を混ぜて描いてるって。

――あの娘にとって太陽の光が毒だから、あの部屋に窓なんかないのにな。

9/25/2022, 11:31:44 PM