細長い指が、時計の上を滑る。あまり厚みのない皮膚、几帳面に整えられた爪がくるりと回る。かちりと小さな音がして、時計の針が重なって、今が何時なのかもう分からない。眼鏡の奥の瞳が細められて、不満気なのに愉しそうですらある。時間を知る必要はないと告げる時計とその指に、不満なのはこちらだ。けれどどうして、どうしようもなく愛おしくもあるのだ。むずかしい人、と笑えば、眼鏡の奥の瞳が逸らされた。“時計の針が重なって”
9/25/2025, 2:45:24 AM