そこは大きな豪邸だった
殺人事件が起きそうな、洋風な邸宅。
その一室で、一人の男性がベットの上で寝ていた。
人間と同じ顔で、頬が赤く火照っている。
手の届く場所には、空のコップと皿が置かれ、窓際でカチカチと時計が針を動かしている。
落ち着いた金髪の男性は、軽く咳をした。
ぼーっと虚な目で、茶色の天井を見つめている。
暫くすると、部屋のドアがノックされ、ガチャリと開く
ぞろぞろと複数の足音が聞こえ、彼等は男性を囲む様に群がった。
群がった四人は、全員子供だった。
炎の様な少年と、水の様な少女と、
土の様な少年と、風の様な少年。
一斉に喋り出し、男性はそれを聞き取ることはできなかった。
心配の言葉だろうと、男性は予測できた。
風の様な少年がその場を落ち着かせ、
土の様な少年が、置いてあった空のコップと皿を、新しいものに変えた。
水の様な少女は、冷たいタオルを額に乗せ
炎の様な少年は、部屋の暖炉に火をつけた。
彼等は各々のやるべきことを終え、部屋を去る。
一連の行動を、金髪の男性は微笑みながら見守っていた。
「怖いね」
誰もいない部屋で、それでも誰かに伝える様に、男性は独り言を呟き始めた。
「君たちが成長し、私の元から去った時。
師匠ならば、弟子の成長を喜ぶべきなんだろうな。
私にはそれができない。だって、私は…」
目を瞑り、瞼の裏にある暗闇を見つめた。
「己のためだけに、君たちを救ったのだから」
エゴの為に人を救ったら、それは救いと呼べるのか。
それを否と言ったのなら、救いとはなんだろうか。
そんな考え事をして、男性は眠りに落ちた。
お題『怖がり』
3/17/2026, 7:41:20 AM