明日にはいない人

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「A兄ちゃんは私と遊ぶの!!」
そう言ってA兄ちゃんの腕にしがみつく。周りにいる小さな子達からずるいずるいと文句が飛んでくる。

A兄ちゃんは仕方ないなあと困り顔で屈んで私を肩車してくれた。

そのまま小さな子たちをぞろぞろと引き連れて空き地をぐるりと回った。しばらくして、もういいでしょ、次はあたしの番!と声が響く。

私は大声で叫ぶ。
「いや!!絶対に降りない!!」

そんなこんなで優しいA兄ちゃんはいつも私だけを特別扱いしてくれていた。最終的には私がごねるだけごねて気づけば解散の時間になるのが常だった。

私はそうやって小学5年生から1年間ずっとA兄ちゃんを独り占めしていた。

高いところが苦手な私。小さい子たちにいつも自分のお菓子を分け与えていた私。



1年間…


私はA兄ちゃんに体を触られていた。人気のない場所に連れて行かれて口を塞がれて、体を押さえつけられ、下着の中を触られる。

誰にも言えなかった。

けれど、幼い私は必死に考えた。どうすれば他の子たちを守れるか。

それが、一年間に渡るA兄ちゃん独り占め作戦だった。

私は6年生になってからA兄ちゃんがいる場所には行かなくなった。心が壊れてしまって、人と関われなくなったからだ。

けれど、当時からずっと願っている。

どうか被害者が私一人でありますようにと。

大人になってからA兄ちゃんに会った。A兄ちゃんは笑いながら「特別な」と言ってファミレスで使えるクーポン券をくれた。

言葉で表しようもない感情が心の中で渦巻いたけれど私はただうつむいて「ありがとう」と言うしかできなかった。

6/5/2024, 11:14:44 AM