前回投稿分から続くおはなし。
最近最近の雪国の、まだ雪が残る山道を、法定速度60km丁度の安全運転で、
スイスイ上がって下がって、ぐねぐねカーブもスイスイスイ、走ってゆくバイクがありました。
バイクの後ろには稲荷子狐が、かわいいライダージャケットデザインのポンチョとライダーヘルメットの帽子を付けて、
ペットキャリー席の中で、素早く過ぎ去る雪国の景色を、じっと、興味深く、見続けています。
現地の天気は予報どおり、「ところにより雨」。
しかし北緯の関係か標高か、周囲にはまだ間違いなく、雪が残っておりました。
「ゆき、ゆき!ゆきがある」
ぎゃぎゃっ、ぎゃぎゃっ。子狐が言いました。
この稲荷子狐、去年の夏まで東京から、一歩も外に出たことがなかったのです。
「ゆき、いっぱい、いっぱい」
雨はザッと多めに降っていますが、コンコン子狐には関係ありません。
東京で見るより、多くの、たくさんの雪です。
あっちこっちに白や灰色が、たくさんあるのです。
そんな子狐の声が、聞こえているのか走行音で分からないかは置いといて、カタッ、かたん!
バイクはカーブを曲がり切る少し前のあたりから、スムーズに加速してゆきます。
「そろそろ、雨から抜けますよ」
振り返ることなく、前だけを見て、バイクの運転手が子狐に言いました。
「後ろの方を、見てごらん」
ぐねぐね山道から抜けて、「局所(ところ)により雨」の局所からも抜けて、
バイクは、とっても見晴らしの良い、天然の展望台もとい緩やかな曲線展望道路へ。
「にじ! にじ!」
子狐が興奮して、叫びます。
「にじ、キレイ!」
今まで走行してきた道路のあたりを、カーブと高低差のおかげで、一望できるのです。
しかも局所的降雨の結果として、大きな虹がくっきり、アーチになって道路におりているのです。
コンコン稲荷子狐は、お目々をキラキラさせて、尻尾もブンブンびたんびたん!
ちょっとした感動体験です。いわゆる今年の春の、最初の宝物です。
狐は雨と強風をあんまり好みませんが、
この日、バイクのペットキャリー席から見た起伏ある山道と、緩やかなカーブと、
それからなによりハッキリ見える大きな虹は、
とっても、とっても気に入ったのでした。
「たまには、雨も良いものでしょう」
バイクの運転手がまた、カコンかこん。
ペダルを踏んでスムーズに、減速しながらカーブの入口に進入します。
少しずつ、また木が増えてゆきます。
少しずつ、開けていた視界を緑が包みます。
「さあ、目的の街まで、もう少しですよ」
ところにより雨の予報地域を抜けて、バイクはスイスイ、冬の終わりの山道を進みます。
シンとした空気、雪解けの温度を少し含んだ雰囲気を置き去りにして、
バイクは雪国の街の中へ、進んでゆくのです。
3/25/2026, 4:29:50 AM