渚雅

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鳥のように羽ばたけたらと そう願ったのは幾度か。


それは けして叶うことのない夢であって,だからこそ失うことのない希望のようにも思う。

濡れた雲に羽が重くなることも,蒼穹が汚染されているという事実も 嫌なこと全て見ないで済むのだから。



『だから私は,羽ばたけたらと空想するの』

そう言って微笑んだ少女がいた。夢を夢のまま抱え込むことを選び抜くそんな子が。

とても澄んだ瞳と洗練された思想を持つ少女だった。汚れなきその在り方は故に現実を隔てた。誰よりも現実に生きてどこまでも夢を愛して,真っ直ぐに視線を上げながらいつまでも瞼を伏せ続ける。

それはとても哀しくて気高く美しい生き様だったと 何故だかそんなことを思い出した。

8/22/2023, 9:53:15 AM