紫水リオ

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お題「枯葉」

俺には、幼馴染だった妻と、二人の子供がいる。
今は家族と実家に帰っているので、昔よく妻と遊んでいた公園に、子供たちを連れていくことにした。

少し歩くと、大きく立派な木が一本、姿を現した。
根元を見ると、大きな枯葉が大量に落ちていて、それを見るなり俺は、小さな記憶がぼんやりと蘇ってきた。

もう随分と幼い頃、将来俺の妻になるなんて予想もしていなかったこいつと、この木の枯れ葉を使って遊んでいた。
枯葉に指で二つ穴を開け、その枯葉を顔に当てる。
『見ろ! 枯葉のおばけだぞー!』
『きゃー、食べられちゃうー!』
『『あははははっ──』』

俺はそれを再現して、子供に見せてやった。
「ちょっと、それ懐かしいわね!」
どうやら妻も当時のことを覚えているようで、大笑いした。
ヒーローものが好きな息子はもちろん喜んだ。
「うわぁ! 枯葉の化け物だ!」

が、娘の一言で、俺と妻は一瞬、フリーズした。
「きゃー、食べられちゃうー!」

「「……」」
次の瞬間、俺と妻は腹を抱えて笑った。
「やだ、そのセリフ!」
「あの頃のお前と同じこと言ってるな!」

この枯葉が、子供たちにとって、小さな思い出として残っていたらいいな──なんて、俺は夢の見過ぎだろうか。

2/20/2023, 9:09:22 AM