うどん巫女

Open App

もし、明日晴れたら(2023.8.1)

朝起きて、薄暗いカーテンの向こうに嫌な予感を覚える。窓の向こうは、案の定雨だった。
「マジかぁ…」
今日は友達と遠出の約束だったのに……。落胆しつつ枕元のスマホを確認すると、メッセージ通知が一件。
『雨、降っちゃいましたねぇ』
メッセージ主の言っている様子が想像できるような、のんびりとした口調に、私は思わず笑ってしまった。
『降っちゃいましたねぇ』
同じように、どこか気の抜けた口調で返す。
『今日のお出かけ、どうする?』
『うーん…雨もけっこう激しいから、やめときましょうかねぇ』
『そっか、了解』
一通り会話を終えて、はぁ、と一つため息をつく。わかってはいたけれど、やっぱり遠出は無くなってしまって、とても残念だ…。
と、終わったと思った会話に、返信が来た。
『それじゃあ、もし明日晴れたら、君に告白するから、楽しみにしといてねぇ』
「…え?」
シュパッとメッセージに楽しげなスタンプが続いたけれど、私は大混乱の中だった。
え?告白??女子同士…いや、そんなこと気にする時代じゃないし、私も嫌じゃないけど…えぇ?!
困惑する私をよそに、空は少しずつ明るみつつあった。
明日はきっと、晴れるだろう。

病室(2023.8.2)

私は生来幸運なことに大病やら大怪我やらに襲われたことはないため、病室なんてものはそれこそ自分がこの世に生み落とされたときにぐらいしかお世話になったことがない。だから、病室に関する記憶はもっぱら他人の入院に付随するものだ。
天寿を全うする間際、病室のベッドに力無く横たわる曽祖父。嬉しそうに、生まれたばかりの赤子を見つめる叔母。そういった、相反する経験しかないのである。
つまりは、私にとっては病室とは生と死の象徴であって、なんとも近づきたくない場所だということだ。

8/2/2023, 10:27:47 AM