雨の香り、涙の跡
『涙の数だけ強くなれるよ』
水たまりから水たまりへ。
誰も居ない帰り道にぴょんぴょんと飛び跳ねてみせる。
足元で弾けてはピシャリと音を立てる靴音と
湿った靴底には何も感じない。
『アスファルトに咲く花のように』
唇から小さな声で漏れる息くらいの囁きで歌いながら帰る。先ほど降ったゲリラ豪雨に濡れた軒先の花が晴れ出した空にキラキラとひかる。
すこし湿った風から雨の匂いがした。すぐに綺麗な青空になるだろう。
『見るもの全てに怯えないで』
傘もささずにびしょ濡れのままくるりと回れば遠心力に乗せて浴びた雨が飛んで行く。
濡れた髪から、手から、顔から。
何もかもがくるくると回れば回るほど飛んでいく。
抱え込んだ何もかもが雨と共に飛んでいけばいいのに。
『明日はくるよ』
くるくる回れば回るほどどんどん悲しい気持ちが飛んでいく気がして勢いよくくるくる周り続ける。
歌に合わせてぴたりと止まると目がぐるぐるとまわって何もかもがどうでもよくなった。
明日はくる。
どんなに雨が降っても必ず晴れるように。
曇った空だってほら、東の空に青空が見える。
ここに青空が来る頃には私の顔も綺麗に乾いて
きっと笑顔になれるだろう。
6/20/2025, 4:02:53 AM