ナミキ

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/星座/

「―――その為、本日は秋の星座が非常に見えやすい条件となっております。ぜひ、屋外に出て星を楽しんで見てください。以上、天気予報でした」


天気予報の通り、星々が沢山見える。夜の散歩をするようになってから随分経つけど、ここまで星が見えることはあまり無いから新鮮だ。冷たい透き通ったような空気を吸い込むと、余計に夜を実感した。
私の家族である犬の風太も、私と同じく遠く前にある空を静かに見据えていて、星を眺めているように見える。

風太はあんたに似ている、と母は言っていた。物静かな性格が似ているのだそうだ。独り言のような冷めた声が印象的でたまに思い出す。確かに、私は口数が多くないし、風太も鳴き声を滅多にあげない。

「風太、星が綺麗だね」
名前を呼ばれたからか、先を歩いていた風太がこちらに戻ってきたのでわしゃわしゃと撫でる。そのまま抱え込んで、私の顔より上の高さまで持ち上げると、意図を汲んだのか風太は上を見上げた。
「もっと近くに見えるでしょ!」
わふ、と鳴き声を聞いて私は笑った。
大人しいと評される私たちの散歩は、いつも結構賑やかだ。



「あの4つの星が、秋の四辺形。それと、他の星を結ぶとペガサス座になるんだよ」
「一番明るい星はフォーマルハウト。みなみのうお座の一等星」
ずっとの抱っこは腕に限界があり、途中からは公園のベンチでふたり座って話していた。
でも、そろそろ帰る時間だ。
「風太」
名前を呼ぶと、いつも顔を向けてくれる。それに今までどれだけ助けられてきたんだろう。
「帰ろっか」
あの家に帰りたくない。けど帰らなければ。
私はまだ、子どもだから。
ぼんやりと私を見上げた風太は賢く、素直にベンチからトスッと降りた。私も立ち上がる。
同時に風太が、わふ、と声を上げた。何故だか、その声が「大丈夫?」と言っているように聞こえて、多分そう言っていたから、私は「大丈夫」と声に出した。


帰り道、行きよりも歩くスピードが遅いのはいつもの事だ。リードから伝わる振動をどこか暖かく思う。「今年も秋は短いのかな〜」「冬になったらおおいぬ座やこいぬ座も見ようね」なんて何でもない話をしながら、相槌を打たれながら、あともう少しだけ星の夜の散歩は続く。

10/6/2024, 4:52:16 AM