朝8:00、まだ寒い風が吹くなかで学校に向かう。ダウンにマフラーにカイロ。これらの完全防備でも、1月の朝はまだ寒い。それどころか、今冬の気温はまた下がりそうだ。
頬にあたる冷たい風に身をすくめるけど、ほぅっと白い息を出してみたり、落ち葉を踏んでみたり、道の片隅に咲く花に目を向けたり、雲の流れをみてみたり。そんな冬の朝の、白くて新鮮で不思議な空間に心和ませれば、いつのまにか学校についている。
朝日に照らさせれる校庭を横目に靴を履き替え、教室へと歩みを進める。ガラッと大きな音をたてながら開く築80年の校舎のドアも、朝の魔法でなんだかエモく感じる。だから、誰もいない教室が朝なのに夕焼けにもみえてしまうのも、窓からの光が暗い教室全体を照らしている、そんな朝の魔法にかかっているからだと思う。
そして私は、窓際の、前から2番目の自席にリュックを降ろしダウンを椅子にかけて窓に寄る。フレームから身を乗り出し大きく広がる街並みと、美しい空をじっと眺める。しかし眺める一瞬だけで、私はすぐにカーテンを閉める。どれほど寒い日でも、1時限目が始まる頃には陽が差し込んできてとてもじゃないが眩しくなるからだ。そんな訳で、私は名残惜しい気持ちをグッとこらえ今日もカーテンを閉める。自席に戻ると、時刻は8:03。『あと2分。』そうで頭で唱え、浮つく心を装おうと本を開く。すると、間もなくして誰かが廊下を歩く音が聞こえてくる。私はドアがガラッと開いた音で顔を上げ、彼の方をみる。
「おはよー」「おー、おはよー」
自然と緩む頬で挨拶を交わす。ちらりと時計をみると、
ぴったり8:05を指していた。彼は毎朝ぴったり同じ時間に来る。それがちょっと面白くて、小さく吹き出した。
「なんだよ、急に笑ったりして笑」
彼も釣られて吹き出す。
「ううん、なんでも!笑」
こうやってくだらないことで笑い合う時間が大好きで、ますます彼のことを好きになる。でも楽しい時間はあっという間で、8:10頃には彼の友人がやって来る。そうすると私たちは会話を終え、私は再び自席で読書に勤しむ。今度は内容にしっかりと集中して。そして教室は一瞬にして平凡を取り戻し、朝の魔法などなかったかのように振る舞う。
朝の魔法は5分だけ。それでも朝一番に彼に会えることが嬉しくて、5分だけでも2人きりを感じられるのを楽しみに、私は今日も明日も8:00に登校する。
欲を言えば、5分なんかじゃなくもっと話したい。
それでも、朝の魔法は私に勇気をわけてはくれない。
そんな弱虫な私でも『彼と一緒にいたい』と、そう願ってしまう。
【君と一緒に】いたいと……。
1/6/2026, 4:14:11 PM