紅月 琥珀

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 それは一生に一度の晴れ舞台。
 空は綺麗に晴れ渡り、雲一つない快晴の日だった。


 私が扉をノックすると彼女から返事があり入室する。
 彼女は綺麗なドレスを身に纏い、髪も綺麗に纏められて、綺麗なメイクも施されていた。
 ずっと隣で見てきたけれど、今までで一番綺麗だと思ってしまった。
『来てくれたの? ここまで来るの大変だったでしょう。』
 でも嬉しいと、私を労いながらも嬉しそうにはにかむ彼女に、私もつられて笑ってしまう。
『今日は招待してくれてありがとう。もう、用意してしまってるかもしれないんだけど⋯⋯これを受け取ってほしいの』
 そう言って差し出した物を見て、彼女は目を見開いてそれを手に取った。
『⋯⋯覚えててくれたの? とても綺麗に編み込めてる。こんなに素敵な物、作るの大変だったでしょう? 私がもらってしまって良いの?』
 そう問いかけてくる彼女に私は頷く。
『貴女にもらってほしいの。今日のお祝いに貴女のためだけに作った物だから』
 そう言った私に彼女は嬉しそうに笑うと、ありがとうと言ってくれた。
『本番! 楽しみにしててね!』
 そう笑いながら彼女はそれを丁寧に机の上に置いた。それを見届けて、少しだけ話をしていたら時間になったので退室する。
 今日という日を祝うために他の参列者と共に、別の場所へと移動するのだ。
 そうして最後尾に付くと少し待たされたけど、程なくして始まった。

 白を身に纏った男女の入場。壇上には神父の姿があり、その後ろには大きな十字架。
 ステンドグラスが光りに照らされて、美しく輝いている。
 神父の前で互いに愛を誓い合うその女性の頭には、先程渡した花の帽子。
 ピンクのバラ、カスミソウ、ガーベラ、トルコギキョウ、ミモザ、スイートピー、ホワイトスター、アリウム・コワニー、ストックで帽子本体とツバの部分を編み込み。カーネーションとアルストロメリアのアクセントを加えて、斜め後ろの方にコチョウランでヴェールの様相を表現している。

 彼女の地域のみに伝わる古い風習を、楽しげに語っていた彼女に―――私から最初で最後の祝福(おくりもの)を。
 沢山の意味と祝福を込めて編み上げた花帽子を被り、今、新たに人生を歩もうとする彼女に呟く。
『おめでとう愛し子。この門出に精霊(われら)の祝福とさよならを』


 それは一生に一度の晴れ舞台。
 空は綺麗に晴れ渡り、雲一つない快晴の日だった。
 初めて出来た人の友人。優しい貴女の瞳に、私が映ることはもうないでしょう。
 それでも、私は貴女の幸せを願っているから。
 暇な時にでも、思い出してね。

1/28/2025, 3:06:17 PM