あおいうみ

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夏草

夏になると通学路の草は私の背を越えるほど伸びて、視界を塞ぐほどだった。
ちょっと腕が当たると血がにじむ。
そんな草もたくさんあった。
子供たちの中では包丁葉っぱと呼んでいた。

夏が終わるころ、地域のおじさん達がこぞって草刈りに励む。私の父もビーバーを持ってグイングインと刈っていた。奉仕作業だ。
誰かのお父さんに会うと声をかけられ手を振るけど、なんとなく恥ずかしいと思っていた。

学校からの帰り道の、刈られた草たちの匂いが大好きだった。
生をとめられたのだけど、根本まで抜かれたわけではなくてまだまだ生きてるよと言っているようなあの青青い匂い。
胸いっぱいに吸い込むと、体の隅から隅まで青い匂いになっている気がしてよくわからないけどドキドキした。

あれは夏草の断末魔なのか?

それでも私には、はんってそりかえってる草たちの姿がなんとなく想像できた。
あれは私の中で明らかに生の匂いだった。刈られても刈られてもまたすぐに視界を塞ぐ。
生きてる匂い。
だからこっちもドキドキしちゃうんだね

あの青臭い、青い匂い。大好きな夏の匂い。
思い出すだけで胸がうずうずする。

8/28/2025, 2:58:12 PM