見咲影弥

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 木枯らしに吹かれて、ギリギリ枝にぶら下がっていた枯葉がはらりと舞い落ちた。落ち葉は排水の溝に吹き溜まる。

 季節は巡る。容赦なく。

 病室から見えるつい先日までは逞しかった木。今では青々とした葉は殆ど落ちてしまって、やけに貧相に見える。まるで木まで病にかかったみたいだった。しかし、これは生命の循環に必要なプロセスなのだ。彼らは無慈悲に総て剥ぎ取られ、そしてまた自分で再生を果たす。逞しく、生きている。

 だが、人間はいくら努力したって再生はできない。一度壊れたら後は悪くなる一方なのだ。私の身体も、もう随分悪くなった。次の春を迎えられるかも怪しいという。

 仕方ないことなのだ。私が人として生きる以上。それに、私の死だって、もしかすると大いなる循環の一部であるかもしれないのだから。抗わずに、受け入れよう。

 あの木の最後の一葉が散ったら……そんなロマンチックな、どこぞのナルシストが呟いた戯言を私も心の中で反芻して感傷に浸ってみる。

 しかし、名残惜しむ気持ちとは裏腹に、喜びもあった。自分が自然の環にかえる日はもう直ぐだ。あと少しで、私は元いた場所にかえることができるのだ。

 早く散らないかしら。

 窓の外の景色をうっとりと眺める。

1/17/2024, 1:54:47 PM