ふわふわに降り積もった新雪の斜面を
歓声をあげ橇で滑り降りていく子ら
…を、見守っていたはずが
なぜか視野いっぱいの青空
わたしは宙を飛んでいた
宇宙船からの謎の光線で吸い上げられるように
空中に浮かんでいたのだ
しばし静止した感覚ののち
バサッと背中から落ちた 雪なので痛くない
何が起きたかわからぬまま空を見上げていると
わたしを呼ぶ 娘の悲痛な声
まさか自分は絶命したのか?
いや、そうではなかった
斜面の上方、立っていた私の後ろから
勢いよく滑り降りてきた子が
スパーンとわたしの足もとに激突
そのまま滑り抜けて行ったのだとか
まったく無傷だったこともあり
どんな図だったか想像しては笑ってしまう
身を案じて泣いたり怒ったりしてくれた娘は
そのまま優しい大人に育って いい思い出話
「雪」
#294
1/7/2024, 10:59:59 AM