たーくん。

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父さんの遺品を整理していたら、数冊のアルバムが出てきた。
いつ頃のアルバムだろう?
アルバムの一冊を開くと、幼稚園時代の俺の写真が何枚も貼られていた。
ページをめくる度に、当時の思い出が甦ってくる。
父さんはアルバムを捨てずに残していたんだ……。
昔はこんなに写真を撮っていたのに、今では家族で写真を撮ることはなくなった。
今の時代はスマホで簡単に撮れるけど、俺のスマホ内には家族の写真は一枚もない。
そういえば、遺影で使う父さんの写真探しには苦労したな……。
結局、運転免許証の写真を使うことになった。
普段から写真を撮っておけば、あんなに苦労しなくて済んだだろう。
アルバムを一通り見て、本棚へ戻す。
これはここに置いておくのが正解だと思う。
さて……。
リビングへ行くと、母さんと弟が居たので声をかける。
「なぁ、写真撮らないか?」
突然の写真撮影に、唖然とする二人。
俺はそんな二人のことはお構い無く、スマホを撮影モードにし、カメラを内側に切り替え、俺と母さんと弟の三人が画面に入るように位置を合わせる。
「はい、チーズ」
親指で、撮影ボタンを押す。
三人共ぎこちない顔だったけど、今の俺達にぴったりな写真だった。

9/2/2025, 10:15:55 PM