妄想の吐き捨て場所

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あいつが宇宙に帰ってからもう2年が経った。
きっと今頃、チューリンの仲間の手を借りて体質を変える手術的なものを受けてるんだろう。
地球と宇宙じゃ流れる時間が違う。
俺とあいつじゃ寿命が全然違う、きっと俺の寿命が尽きた後もあいつは何千年、下手したら何万年と生きていくんだろう。
そんな奴からしたら2年なんて2日くらいなのかもしれない。
だが俺は生粋の地球人だ、2年は2年に感じるしそれだけ会えないと多少なりとも寂しくなってくる。
(今何やってるんだろう)とか、(宇宙のどこら辺にいるんだろう)とか、色々考えてしまう。
(俺ってこんなに女女しかったか?)という余計な考えも追加された。
ぐるぐる考えて落ち着かない時は外を歩くに限る。
俺は寝ている家族を起こさないように静かに階段を下り、極力音を出さないように玄関のドアを閉めた。
外の空気はひんやりしていて、吸い込むと少し頭がスッキリするような気がした。
外を歩くといっても行くあてなどある訳もなく、結局いつもの公園へと足を進める。
歩きながらも俺はまたあいつの事を考えていた。
(そういえばあいつ、公園のブランコは座るためのものだと思ってたな)とか、(俺が思いっきり漕いでジャンプ着地を見せたら、自殺を止めるみたいな慌て方をしていたな)とか。
考えるのはいつもあいつの事だ。
宛もなく外を歩くと公園に行ってしまうのだって、フラッと帰ってきたあいつがブランコに腰かけていないかなんて空想してしまうからだ。
そんであいつも俺を見つけて「やぁ、タケル。」って声をかけながらフッと笑ってくれやしないかと期待している。

「…タケル。」
ほら、もうあいつの事を考えすぎて幻聴も聞こえてくるレベルだ。

「タケル。」
「………しのぶ?」
考え事をしながらもやっと着いた公園にはあいつがいた。ブランコには腰かけていなかったけど、ブランコのそばに立っていた。
一瞬時が止まった、あれだけ焦がれていた存在が今突然目の前に現れた衝撃で息を吸うことさえ忘れた。
あいつもみるみる目が見開いて、驚いてるのが丸わかりだ。
気づくとお互いが駆け寄ってきつく抱きしめ合っていた。
「…驚いた、着いてすぐに会えるなんて。」
「俺も驚いた、まさかここに居るなんて。」
肩に埋もれた状態で話されて少しこそばゆい。
「タケルはこんな夜遅くにどうしてここにいるの?」
しのぶは少し首をかしげながら狼狽えてる俺を見ている。
(お前を探しに公園まで来てたなんて言えねぇ!!)
何も言えずグッとただしのぶの目を見つめ返す。
黒い髪に桃みたいに柔らかそうな白い肌、目には銀の三日月が鈍く光っている。
(宇宙人て本当に全然見た目が変わらないのな。)
2年前と変わらない姿を見ていると一生懸命言い訳を考えていた脳の動きも鈍ってくる。
そうだ、2年も待ったんだ。毎日こいつの事を考えて。
「しのぶがいないか探しに来てた。毎日。」
素直にそう言うとしのぶは少し驚いた後表情を緩めて「ふっ」と笑った。
「そっか、ありがとうタケル。
僕もね毎日タケルのことを考えていたよ。」
そう言うとしのぶはまたきつく抱き締めてきた。
俺も応えるように抱きしめ返す、俺たちはしばらく再会の喜びを噛み締めるように抱きしめ合っていた。

ーあと続き書くー

4/28/2025, 7:51:35 PM