無色の世界
「虚無 〜はてしない物語〜」
少し前「世界が灰色に見える」なんて台詞をドラマで聞きました。きっと無色じゃなくて無職で閉籠てる人は世界が灰色に見えたりモノクロに見えたり無色に見えて虚無に食われてしまうのではないか。ドラマレビューでは、なんだかプロなのか素人なのか分からないカウンセラーさん達がいろいろとシッタカな名前を付けていたけど、単に思春期だろって思ってました。高校生のその人が40年後も「世界が灰色に見える」とか言っていてからシッタカな名前をつければと思っていた。そのドラマと同じ頃モノクロの雨の中いつまでもバスを待ってる女の子の物語もやっていて、それらがとても繊細な思春期の心には見えずに、腫れ物に触るように育てられた赤子の成れの果てに私には見えてしまった。そう、無色の世界で「虚無」に食われ無表情な仮面でもつけた様な顔でセバスチャンを虐めていた子供たちのように。
世界の終わりのその果てにいるという「虚無」
子供たちの夢を食い夢想を食い物語を食いつくそうとする「虚無」
選ばれし勇者はセバスチャン相棒は白馬アトレイユ。
セバスチャンとアトレイユは「虚無」と戦い物語を守るために旅に出た。
行く手に「虚無」は広がり
美しく舞い踊り落ちる薄紅色の絹を纏った花弁たちが敷きつめた花弁の絨毯のうえを滑る子供の燥ぐ声も、シュプールを花弁の絨毯のうえに描く橇に乗った虫たちも、その花弁を喋む小鳥たちも姿を消し去り沈黙の無色の世界「虚無」はひた走っていました。
アトレイユは悲しみの沼に捕まり希望を絶やしてしまい沼にのみ込まれてしまいました。
セバスチャンは最後の勇気を振り絞り世界が灰色に見えるモノクロの雨の中バスを待つその世界の果てにいる無色で無関心で無感動で夢想で人の心を支配しようとする「虚無」と戦いました。
戦いは終わり、全てが「虚無」に支配されたような暗闇の中でセバスチャンは涙しました。その涙ひと粒の中に生命が宿り、あかりが灯りました。何処からかセバスチャンを呼ぶ声が聞こえます、声が聞こえる方を目指すと闇の中に光るお城があり女王様がおられました。
「僕は負けてしまったのですか虚無に」
「いいえ、あなたは勝利しました」
「さあ、ここから始まるのです」
「あなたの物語を描いてください」
「まず、わたしに名を」
「物語に登場するものたちに名を、あなたがつけてください」
「そこから、あなたが思い描く全てが」
「この国をつくります」
煌めく数多の物語は、たったひとつの名前から始まるのです。
無色の世界に色をつけながら、色々な物語の色を、あなたがつけるのです。
ミヒャエル・エンデ著書
「はてしない物語」へのオマージュ。
2024年4月18日
心幸
4/18/2024, 4:00:47 PM