梵 ぼくた

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《輪廻転生》とはよく聞くが,本当にそうなるかなんて誰も知らない。
実際,経験したこともないから口先だけでベラベラと語れるのだろう。

しかし
あの日,あの場所,あの時間。

彼女に出逢えた奇跡は,輪廻転生とやらを信じてしまった。

ルビーを溶かし流したような紅い目,珊瑚が埋まった金色の鍵,鈴のように転がる笑い声。

…彼女を構成するもの全てが,彼奴にそっくりだったから。


瞼に浮かぶ貴方の微笑みを,噛み締めるようにゆっくりと堪能する。あの日から数百年経った今でも,未だに思い出してしまい辛いものだ。

貴方を思えば,穹が緋色に染まる。

逢魔が時…彼女たち《天照》の隊員にとって,1番の山場。昔から,この時間帯は魔物に遭遇する確率がうんとあがると言われている。

そんな《影》を倒すのが彼女達の仕事。
生きるも死ぬも表裏一体なこの世界で,オレは彼女を死んでも守る,そう誓ったんだ。

カサ,と音を立て枯葉を踏みしめれば,ふわ…と白い息が宙を舞った。

「 もうすっかり冬だな 」

肺に充満した空気が,ちくりと牙を剥く。
白いマフラーに顔を埋めれば,彼女がオレの手を引いた。

『 そーだな!!この先もっと寒くなるぜ!! 』

にか,と太陽のような笑顔を見せれば,仲間が待つ神社へ向かって駆け出す。

カサ,カサ,と枯葉を踏みしめて。

枯葉のように積もり積もったこの思いは,生涯をかけて彼女へ伝えるつもりだ。

だから,オレの前から消えないで。
絶対に,守り抜いてみせるから。

2/19/2024, 11:30:29 AM