こんな夢を見た。一人称視点で自分の姿は見えないが、不健康そうな男性が常に隣にいた。彼に私は見えないらしく、特に反応もないまま生活を続けている。まるで幽霊にでもなったかのようだ。特にやることもないので、彼の生活を観察することにした。彼の職場はいわゆるブラック企業らしい。待遇の悪さや長時間の残業は当たり前。それに上司からの理不尽な小言や嫌味で、彼は常に具合が悪そうだった。彼を何とか元気づけたくて、色々やったがどれも失敗に終わった。そもそも気づいてもらえないし、触ることも出来ない。ずっと隣にいるのに、何も出来ないなんて。私は歯噛みしながら彼を観察し続けた。ある日彼は上司からの嫌味を受け、会社を飛び出してしまった。どこかに行く宛もないのか、ふらふらと彷徨う。
「逃げたい」
彼は呟いた。それがきっかけになったのか、彼の口からネガティブな言葉が溢れだす。消えたい、死にたいと呪詛のように繰り返す彼は痛ましかった。私は憤慨した。彼が何をしたって言うんだ。ずっと隣で見てきたから、彼の頑張りを私は知っている。結果だってそれなりに出しているはずなのに、何故。体中の血が沸騰するほど怒っていると、私の視点はまるで怪獣のように高くなった。湧き上がる怒りのまま、彼の職場を破壊し始めた。下の方から悲鳴やサイレンが聞こえる。そう言えば、彼はどこにいるんだろう。探すと彼はいつの間にか近くの建物の屋上に避難している。無事だったのか。呆然と自分の職場が破壊されるさまを眺めている。ぷっと噴き出したかと思うと、大声で笑い始めた。咽るほど笑い、笑いが収まると彼は言った。
「ありがとう」
まるで見えているかのように、彼は私にお礼を言った。
3/14/2026, 3:15:23 AM