「あのね、私ずっと君に謝らなきゃいけないことがあったんだ。」
目の前の君は、椅子の上でたいそう座りをしていた。
「君がね、君の親に殴られてること知ってたよ。なのにね、私なにも行動を起こさなかったの。本当に、」
本当に悪いと思っている。けどそう言ったところで、君は許してはくれないだろう。優しい君でも、これは許してはくれないだろう。なんだかそんな気がした。
「…ごめん」
ぐるりと彼女がこちらを見た。
嗚呼、その顔。その顔は、君が二度と口を開かなくなる前の日に、私に見せた顔だ。
愛らしく、怖い。私以外は知らない君の笑顔。
段々、その顔が歪んでゆく。目は黒く染まり、口からボタボタと腐った汁が流れ落ちた。
ごめんなさい
5/15/2023, 1:02:43 PM