君がいなくなる。遠くへ行ってしまう。
君が引越しする日。僕は君の家まで駆けていった。
トラックに乗った君が「ばいばい」と手を振った。
遠ざかる君に向かって、声が枯れるまで君の名前を叫びたかった。
その日の僕は風邪を引いていて、声がほとんど出なかった。
消え入りそうな声で、君の名前を呟いた。ぼろぼろに泣きながら呟いた。
あれから何年経ったか――。
思わぬ君との再会に、またあの日のようにぼろぼろと泣いてしまった。
「泣き虫なのは変わってないんだね」と君は笑った。
まるで今でも子供のように、君は僕をぎゅっと抱き締めた。
僕は今度こそ、声が枯れるまで君の名前を呼んだ。
『声が枯れるまで』
10/22/2023, 6:46:26 AM